英語力ゼロからでもできる語順訳と音読 その3

コア英語教室天満校では10数名の大人の方が学びに来ておられます。

少しはできる、と思われている方から、すっかり忘れてゼロからスタートという方まで様々ですが、多くの方はまず単語がスムーズに読めない、知らないという人たちです。

英語についてはほとんど忘れてしまっているとか、文法は断片しか覚えていないといった方のためのクラスとしてスタート。ひたすら音読中心のクラスと言ってもいいでしょう。会話教室は敷居が高いし、通ってもついていけず、長続きもしなかった。でも、少しはわかりたいし、学び直したい、英語の基礎から始めたい・・・

そのような大人の方がたくさんおられます。

そこで、とにかくコアの基本である「音読と語順訳」に徹した授業ということで始まったものです。

小学生と同じ教材を使い(中学生レベルの長文)、同じ方法で進めます。何人かの人たちは、すべてのことにつまずいての出発でした。物語を訳していても、Heが誰を指すかがわからない。Theyとthenの区別ができない。発音も出鱈目が多い人もいれば、ある程度読めたり、単語を知っていたりという人もいます。嫌いになった英語を何が何でももう一度やりなおすのだと意志を持って望んでいる人もいます。

ただ全般的には、物語の進行についていけてない。ストリーが見えていない・・・読みもCDの真似どころか、滑らかに読めない状態から始まったといっても過言ではありません。

しかし、一番在籍期間が長い人たち(入会後10年は経ちます)は「うすのろジャッカル・ランペルスティルツキン・赤ずきん」を各3回訳し直し。上級の6作品(ピノキオ以降)は2回ずつ訳し直ししました。全部で延べ21作品を訳したことになります。ちなみに各作品の語彙数とリーディングの時間はというと

作品名    語彙数    時間

ジャッカル   764   7’35”

赤ずきん    838   6’16”

ランペル   1116   8’08”

ピノキオ    980   7’00”

シンデレラ  1198   9’10”

ヘンゼル   1263   9’00”

アヒル    1322   9’15”

トムサム   1390   9’32”

ジャック   1457  10’43”

(延べ)  10328  76’39”

延べ1万語以上の作品を2回、3回と繰り返したのですから、相当な練習量と言えるでしょう。授業回数で言えば10年で450回(時間)になります。

どなたも数年経つうちに、読みはしっかりとし始め、訳ルールが定着し、年を追うごとにあゆみがスムーズになっていきました。

基礎がしっかりし始めると、顔も輝き始め、言葉に自信が満ち溢れてきます。

講師とよもやま話をするまでに打ち解けてきて、教室が学びの場から、しゃべり場へ変わっていったのは4−5年も経ってからでしょうか。

いつの間にか生活になくてはならない時間となり、学習が文字通り、価値あるものに変化していったのだと思われます。ご本人たちは気づいていないかもしれませんが、どなたも驚くほどの進歩が見られるようになったのです。

安定して読みと訳ができるようになると、一般の学習書にも挑戦しようということになり、

今はNHKの「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」を順次読み始めています。

単語の意味はテキストに書かれていますので、参照して予習してくる方もいれば、できないのに、ぶっつけ本番の人もいます。わからない単語があっても、授業の中でお伝えしますので、皆さん一夜漬けならぬ、直前予習で臨まれる場合が多いと言えそうです。

1課の半分が授業1回分。火・木の女性クラス(それぞれ2名)は単語の読み練習も行います。課題の箇所の音声を流し聞き、その後講師について一文ごとにリピート音読練習、そして交互に一文ずつ訳してもらいます。NHKのこのシリーズに取り組める人たちは、そこそこ実力がついているので、フレーズ訳や一語訳はほとんど必要ありません。訳に苦戦している様子が見られれば、フレーズの区切りまでを訳してもらいます。そうすると、「あっ!」と言う感じで、生徒さん自身に構文が見えるという現象が起きます。そして訳したところを音読。訳が終わったら、二人で役割を分担し、掛け合いで読む練習。

また応用できそうなフレーズを使い、違った場面を設定してのやり取りを行うといったこともやります。実力差は否めないけれど、個々に合わせて授業を行うより、クラス全体がスムーズに進むように心がけていると、講師は言います。

語順訳をし、意味をつかむということで言えば、全体に何が描かれているかがわかったらおしまいになるはずです。実際、子どもたちの場合はそれで精一杯なのですが、大人クラスは一味違います。出てきたある言葉に触発されて、関連した話に発展していきます。

素材となった作品のテーマ全体のこともあれば、有名人のこと、日本の各地の話題が新鮮な話のネタと化していきます。

英語を訳すという行為は、初めての風景に出会った時の新鮮な驚きや感動に似た気持ちを呼び覚まし続けるのかもしれません。ふだん気に止めないでやり過ごしていた言葉が、英語として登場してくると、俄然生気をおびて感じられ、次々と話したいことが溢れてくる、そんなふうにも見えます。

テキスト ボックス:
テキスト ボックス: Enjoy Simple English 11月号より抜粋

I’m here in Kuwana City in Mie Prefecture.

This area has been well known since the Edo period for its metal casting or imono.

日本語だと、たとえば

「私は今三重県の桑名に来ています。ここは江戸時代から金属鋳造、つまり『鋳物』でよく知られている(有名な)ところです。」

訳し終わると、言いたいことが沸々と湧いてくるようです。それは、作中のレポーターが興味を持ち、またそれを読者に伝えたいという気持ちにも重なるとも言えるでしょう。すると、生徒さんそれぞれにとって引っかかった言葉について、いろいろと話したくなるのかもしれません。その話が簡単なストーリーを豊かなものに変化させていきます。

大人であるということは、一人一人異なった経験を重ね、言葉に関しても固有の広がりを見せるということです。ある種の言葉に対してこだわりが生まれるということでもあります。英語を学ぶという共有の時間は、英語という言葉を通して、個々人の歴史を語ることにもつながっていくようです。今を生きる子どもたちと異なり、人生の道行にまつわるそれぞれのエピソードが垣間見られて、なかなか興味深い時間でもあります。

講師曰く「『エンジョイ・・』に入る前の物語2作品くらいから、生徒さんが物語の中に入り込めるようになりました。情景・場面の移り変わりや、主人公の気持ちの変化などを『こう感じましたよね』などと話す機会が増えました。あぁ、この人たちは英語を英語で直接理解できる段階に来ているんだ、と感動すら覚えました。」

成績にとらわれず、純粋に学ぶには音読と語順訳ほど適したものはありません。

問題集をすることもなく、テストを気にしないで、純粋に音読と語順訳をやればいいのです。方法がいかに密やかにかつ確実に浸透し、学力の成長を促すかがよく見えてきます。何よりも、授業=雑談あり=何より楽しい=人物発見・話題沸騰=世界が広がる・・・

英語学習に行き詰まったと感じている人、自分に適した教室などないと思い込んでいる人、いや、それどころか、何かやってみたいとは思っていても、自分は英語を学んでみたいと自覚さえしていない人たちに向けて、「こんなやり方があるのですよ」。「どなたでもできる方法なんですよ」とお誘いしたくなります。

あなたも、始めてみませんか。コア式「音読と語順訳」。