「産学官民連携の地域力」
関西ネットワークシステム編
学芸出版社刊
6月にKNS関西ネットワークシステムの会に出席したおり、世話人のお一人、メビック扇町の堂野さんが、二度三度と司会の合間にこの本を紹介されたので、その存在を知り読んでみた。
読み終えて、想像以上の世界がそこに展開されていることにまず驚き、そしてあとはため息が出るばかりだった。
肩書きを横に置いたおつきあいが、新しいうねりを生み出している、ということに驚き、教育の世界や英語学習の分野では、こうした集まりの可能性に半ば絶望的だからである。
私自身は大阪に事務所を構えた今春、単なる英語英会話教室ではなく、「英語」を媒介として如何に地域の方々が集まる場所に出来るかを考えて来た。
日本人にとっての英語は、必ずしもビジネス等で使えるレベルということに限らず、どのような形ででも触れていくことは大切だと思っているからである。
3年前大阪府内の公立中学の先生方対象にセミナーを開いたとき、その案内の一つとして府や市の教育委員会に出向き説明はしたものの、そこでまず最初に担当の方がおっしゃる言葉が「営利事業のは案内できません」であり、或る市では「会社?だめ!だめ!」と、こちらと口をきくのも駄目という態度に驚いた。英語教育についてのセミナーをしたいと申し出ているのだから、せめてそれがどのような内容で、現在の学校教育に生かせるヒントの一つでもあるのかと、かえって興味津々の反応があっても良さそうなのに、一応聞きましたで終わり。学力を上げることは関係者にとっては切実な問題ではないのだろうか。どんなこと、誰の経験にしろ、広く情報を収集し検討すべきだと思うのは、「企業さん」であるからなのか。
二つの市では教育委員会の方の配布物と一緒に中学校に配っていただけたので、行政地区による対応の差にまたまた驚きもした。
DMで各学校に案内して、計15名の先生方は来られたけれども、どんなに良い方法でも、現実の学校で新しい試みをすることがいかに困難かを、皆さん訴えられていた。こうした試みで感じたことは「何重にも」壁があるということであった。現在の仕事に携わって40年近くなり、教育、とりわけ英語学習の方法論等については、根本的な話し合いを関係者で行うことで、教育のための時間経済性を高めないと、この先百年何も変わらない。そんな気持ちに満ちていた私にとって、KNSの集まりはとても新鮮で、刺激的あった。
ものつくり中心の今のKNSに参加させていただいた日は、大きなため息をついて帰途につくくせがつきそうです。
英語はビジネスの世界はもちろんのこと、そこに至るまでの子供たちの学習においても立ち後れた分野だと思います。「英語好き」が集まっても、画期的なことは何も始まりません。どなたか「英語嫌い」の方々と、話題を共有したいものだと思っております。