⑥ 語順が違うと意味が変わる
私たち日本語話者は「述語を最後に置く」のが当たり前と思って、話したり、書
いたりしますが、英語を母語とする人たちは、主語と述語動詞をセットとして英
語を使っています。英語には、日本語で使われている助詞にあたるものがなく、
語順によって文の意味が決まります。
例えば
A dog bit a person. 左の文は「犬が人をかんだ」になります。
A person bit a dog. だと、「人が犬をかんだ」になります。
述語動詞の前(左)が主語になります。
これを日本語の順序のようにa dog a person bitやa person a dog bit.とすると文
であるとは認められません。
日本語では語順ではなく、多くは「は、が、を、に」などの助詞を使うことで語
句にまとまりを作り、述語を文末に持ってくれば文になります。「彼は(昨日プー
ルで友達と一緒に)泳いでいた」
1)A dog bit a person.
語順訳します。
(‘A’はここでは訳さないでおきます)
犬
犬かんだ 「bit=かんだ」という動詞があるので、その前は主語とみなせる
ので「が」を足して、
犬がかんだ
犬が人かんだ 動詞の右側にくる名詞は目的語になるので、
「を」「に」をつけると
犬が人をかんだ
2)A person bit a dog. だと
人
人かんだ
人がかんだ
人が犬かんだ
人が犬をかんだ
このように語順に沿って訳さないで、単語の意味を書いてみます。
1)犬 かんだ 人 そのまま訳したら「犬が人をかんだ」
2)人 かんだ 犬 (意味が通じるようにと考えて、犬が人をかむのが普通だ
としてしまうと)「犬が人をかんだ」となり、これは間違いですよね。
日本語の語句をつなぎ合わせて意味を通そうとすると、間違いを犯しやすくなり
ます。つまり日本語から見て意味の通る訳し方は必ずしも正解に辿り着くとは言
えません。英文を無視して、単語の意味だけをつないで日本語にしようとしては
ダメなのです。第一に長い英文になった時、日本語としてまとめようとしても、
どうまとめればいいかわからなくなることも生じます。英文は、英語を話す人の
言葉の順序に従って訳す方が間違いは生じにくいと言えるでしょう。
語順訳の初期段階では、一語一語訳すのでわけがわからなくなることがあるかも
しれません。しかし次第に慣れて、あるまとまり(チャンク)ごとに訳せるよう
になれば、語句の配置感覚が生まれます。つまり英文の型が見えるようになって
くるでしょう。そのためにも、今まで使用してきた言葉、主語、動詞、目的語と
いう言葉が意味することをしっかり身につけるようにしましょう。
そのために大切なことが二つあります。一つは訳を間違えても当たり前ですが、
間違えた時は必ず「訳の原則に戻る」。もう一つは音読を欠かさないということで
す。音読は一番大切な学習です。英語話者が話しているように音読することがで
きるように努めましょう。スラスラ言えるようになると、英語話者の気持ちに沿
うことになります。英語話者は英語の語順に沿って意味を表しますから、その順
序通りに、前から訳すことは、学習として自然であると言えるでしょう。
まとめてみましょう。
英文全体の単語をあらかじめ訳し、その日本語を集めて日本語の文にするという
習慣を捨てましょう。
英語話者になったつもりで、語順に沿って意味をつかみましょう。
語順に沿って前から訳してゆくと、英文の語順感覚も養われます。
語順感覚が確かなものになると、英文の型が見えてきます。
英文の型が見えてくると、英作文もスムーズにできるようになります。
語順訳をトントン先へ進めるためには、単語や熟語をたくさん覚えることが大事です。
また、語順訳をする前に、訳す文をスムーズに読めるようにし、訳し終わったら、
またその文を音読しましょう。音読は英語学習の万能薬ですから、おろそかにし
てはいけません。
英語話者になったつもりで語順訳をし、英語話者のように音読すれば必ず力がつ
きます。英語の仕組み(英文法)はすぐにわかるものではありません。知識を知
ることは大切ですが、知識で英語を訳すまえに、焦らずに語順訳と音読を徹底すれば、
必ず知識も本物になるでしょう。