「語順訳」サイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
中学校の教科書の「語順訳」は役に立ったでしょうか? 実際に私と一緒にやりとりしてみ
ないと、わかりづらかったかもしれませんね。皆さんにはぜひ「コア式語順訳」を理解し、
その良さを知っていただきたいので、少し話題を変えてお伝えしようと思います。
1)英語が「わかる」というのはどういうこと?
2)学校の英語とコアの英語との違いはどこにあるのか?
3)コア式「語順訳」は、実践するとなぜ学力がつくのか?
4) 英作文に挑戦して語順感覚を確かなものにしよう!
5)とても大切なこと〜どのような英文にも、語り手がいて聞き手がいる
1)英語が「わかる」というのはどういうこと?
① 私たちはどのようにして日本語がわかるようになるのか
〜赤ちゃんのときに文法の基本を獲得〜
この世界に生まれ出てくると、赤ちゃんはすぐにたくさんの言葉に出会います
(実際は、お母さんのお腹の中にいるときにすでに耳は聞こえているそうです)。お医者さん、お母さん、お父さんなど自分の周りにいる人たちから、色々な言葉を
浴びて暮らすようになりますが、赤ちゃんに言葉を教えようと思う人は誰もいま
せん。みんなそれぞれ一方的に赤ちゃんに話しかけるだけです。赤ちゃんは誰か
らも言葉のルールなどを教わることはありません。それなのに、いつの間にか言葉
を返し始めます。不思議です。赤ちゃんは周りの人たちが話す言葉をじっと聞き、
言葉にはルールがあることを自分で見つけるのだそうです。言葉には区切りがあ
ること、動詞や形容詞が変化することなども体験の中で見つけていくんでしょう
ね。誰も学校の授業のように文法を教えてくれるわけではありません。
このように、人間には、体験をとおして、そこに隠れているルールを見つける能力
がありますが、成長するにしたがって、逆にルールを習うことで、自分が日頃使っ
ている言葉の運用能力を高めていくわけです。つまり、赤ちゃんの時とは異なって、
規則を知るようになると、その規則が当てはまる事例を見つけたり、規則を応用し
たりできるようになっていきます。
② 交通信号でたとえると
ふた通りのわかりかたがあることを、歩道を渡るときの信号を例にとって見てみ
ましょう。
信号のない田舎に住んでいた人が街に出てきたとします。そのとき街の人から交
通には規則があって、歩道を渡る時に信号が青なら渡ってよし、赤なら渡ってはい
けないと教わります。街のあちこちの道路に確かにその信号があり、規則を守らな
いといけないことがわかります。誰もそのことを教えてくれない場合はどうなる
でしょうか。その人は交差点には赤や青に変わる信号があることを、たくさん経験
する中で知ります。そして人々が青の時には渡り、赤の時には待っていることにや
がて気づくでしょう。このように物事の解り方にはふた通りあって、最初に何かの
規則を教わり、体験でそれを確認する方法が一つ。もう一つは、たくさんの体験の
中から自然と規則をつかむ方法があります。この場合は、信号というシンプルな事
柄についての規則ですから、すぐに覚えられますし、体験から知る方法もそれほど
時間はかからないでしょう。
③ 英語の規則となるとどうでしょう。
例えば英語の動詞には2種類あります、一つはbe動詞のグループ、もう一つは一
般動詞と呼ばれるグループといわれるものです。これらにまつわる規則を全て最
初から学ぶとなったら大変です。規則を覚えるのが大変だということで、易しいと
考えられることがらから順番に、つまり部分的な説明が行われるのは、そのような
理由からです。そして習った範囲の規則をおぼえたかどうかをたしかめるために
問題集などをやるわけです。学校のカリキュラムに沿って、つぎはその先までの規
則を教えられてと、息つく暇がありません。これだと、その進度についていけない
場合、さらに先に進んだときの規則はもうお手上げになります。順番に少しずつと
いうのはいいのですが、学校のように集団授業だと、どうしてもその進度について
いけない場合が起こります。規則をあらかじめ教わるときは、一つ一つのステップ
を確実にこなさないと先へは進めなくなります。易しい部分を積み重ねて全体へ
向かうというのは理にかなっています。しかし、教わった部分をそのつど了解でき
ないと、最後の目標まで辿り着くことができないということになってしまいます。
もう一つのわかり方の場合はどうでしょうか。規則についてわからないままに体
験をしてみる場合もやはり時間はかかります。私たちの語順訳というのがその例
の一つですが、いちいちこれはbe動詞で3人称単数の場合です、などとは説明
しません。「そのwasは〈だった〉と訳しておきましょう」という具合です。
しかし、色々な動詞の姿を体験する中で、「前にもこの形が出てきたな」といった
気づきが生まれます。be動詞と一般動詞という区分けをいちいちしませんが、た
くさんの表現に出会いますから、なんとなく区別がつくということが起こってき
ます。ただし、規則を全て知るというわけにもいきません。やはり時間がかかりま
すが、語順訳の目的は知識を得ること以上に、音読と共に語順感覚を育て、また語
順を決めるための文の要素、つまり「主語・動詞・目的語」など、英文の大切な骨
格をつかむ訓練になります。まだ何も知らなくても、単語や熟語の読み方や意味
が与えられ、「訳のルール」を応用すれば訳していけます。部分的に知識を知らな
くても、一つの物語という全体を追体験する中で、いろいろな印象的な文章に触れ
ることができるのです。
このように、英語についての規則=文法を理解するためには、どちらの方法も時間
がかかります。(なんといっても、外国の言葉ですから当然ですよね)。ただ最初の
方法、学校での進み方だと、自分が納得し、消化するのを待ってはくれず、どんど
ん先へ進んでしまいますから、どうしてもついていけないことが起こります。そう
すると、理解が半端なのにもかかわらず、規則をとにかく暗記するしかなくなるわ
けです。私たちの語順訳の方法だと、なんとなくぼんやりではあるけれど、体験は
確実に積み重なっていくので、文法知識について納得できることが多くなります。
学校で習ったことに未消化な部分が残っていても、体験を通して納得できるとい
うことがあります。したがって皆さんは学校で習い、問題集で復習するという方法
と、自分で語順訳をやることで色々な英文に出会うという方法、その両方からの学
び方をした方が良いと考えるのです。
人間には物事をふた通りのわかり方、両方向からのわかり方があると述べました。
片方だけでは、なかなか納得できるところまではいかないと思われます。問題集だ
けに頼るのでもなく、体験だけを積み重ねるだけでもなく、両方面からの学習を試
みることが不可欠なのです。
英語がわかるとはどういうことでしょうか。一つは英語の仕組みを知識として、自
分の言葉で説明できるまでになることです。もう一つは、英語の語順に沿って音読
したときに、意味がとれるほどに語彙力(知っている単語の量を増やすことと、そ
れらを使いこなす力)と語順感覚が身につく、ということです。知識と実際の感覚
の両方を自分のものにできた時、わかった、と言えるのではないでしょうか。知識
を持つということは、応用力を身につけるということになります。他方、語順訳を
とおして語順感覚が身につくと、知識として知らない箇所に出会っても、文全体の
流れから類推を働かせることができるようになります。
片や、知識を持っている範囲のことはわかるけれども、知識外のことはまったくわ
からない。片や、知識としては不十分かも知れないけれど、類推力を働かせて、文
の意味をつかむことも可能になる、というわけです。