「易しい」は「難しい」!?
中学レベルの英語の学び直し・丁寧な解説・図解入りで親しみやすい説明。
本やネットの案内を見ると、このようなキャッチコピー多いですよね。でも、ちょっと待ってください。中学英語でさえほとんど忘れてしまい、自分は英語力ゼロだと感じている人にとって、「学び直し」以前に学習の指針が欲しいところではないですか。「丁寧」とか「図解入り」ということでわかるくらいなら、とっくにはかどっているのではありませんか?易しく書かれている=わかりやすい、とは限りません。易しいものから難しいものへという段階を踏む考え方で教わった中学校での学習が身に付かなかった、という思いがありませんか。
この「易しい」というのが曲者なのです。
「易しい」とは一体どういうことを指すのでしょう。一つには、英語全体との出会いではなく、部分を積み重ねていくということ。動詞で言えば、現在形から入って、進行形、過去形、未来形、完了形というように、より複雑で英語独特の内容へと進んでいくかたち。例文に使われる場面が身近な出来事で構成されているということ。例えば学校での出来事、また一見日常生活で出会うかのような場面などです。しかし部分の積み重ねであるため、どうしても内容が薄くて、現実感に乏しいと言えるでしょう。私たちの現実生活で交わされる言葉には、過去形もあれば未来形も受動態もあります。実感している出来事は実にさまざまな表現に満ちています。そこで私たちが考える、ほんとうの「易しい」言葉の世界とは、現実に使われている言葉の世界のことを指すのだと考えるのです。物語や昔話は現実生活と離れているように見受けられますが、お話にハラハラドキドキしたり、感動を覚えるのは現実の延長と感じられるからにほかなりません。教科書のように話題が身近だから易しいのではなく、喜怒哀楽を感じられた時、その言葉の世界に親近感を覚えるのだと思います。
つまり、英語力ゼロを自覚する人にとって一番必要なことは、学習対象が易しいことではなく、心が動かされる言葉との出会いではないでしょうか。私たちの生徒である小学4年生が不定詞や関係代名詞やso~that構文が出てこようが、絶えず前向きで語順訳を進められるのは、物語という「未知」の世界が目の前にあるからにほかなりません。「未知」な世界だからこそ、この先に何が現れるかということに引き寄せられてゆくに違いありません。
それは幼児期の、自分が生きてゆく上で大切なものとの出会いに似ています。自分の身の回り(主に保護者ですが)から発せられる言葉が何を意味するかを必死になって探し求めていくうちに、言葉にはルールがあることをつかみ取ります。文法だけではなく、音に含まれている情感をもつかんでいるでしょう。自分に向かってくるトータルな表現だからこそ、そこに価値があることを発見するに違いありません。
ドメニコ・ラガナという人がいて、日本語の勉強のためにたくさんの小説を読んだという話を読んだことがあります。もちろん文法も学ばれていたでしょうが、小説を読みこなしたことが自分の日本語力に役立ったと強調されていたのを覚えています。(なんという題の本だったかまでは覚えていないのですが)
童話・昔話などの物語には語り手がいます。その語り手が「昔・・・がいました」と語り始めた瞬間に生まれる物語世界は色々な英文でできています。自分で訳しなさいと言われたら、難しいと感じられるでしょう。でも十ほどの訳ルールと講師のヒントやアドバイスがあれば、ゆっくり、ではあっても前に進めます。一つ一つの文法には易しいも難しいもありません。淡々と訳し続ければ、いつの間にかコツを覚え、次第に速く訳せるようになります。
英語の語順に沿って訳す癖がつけば、速く読解できるようになります。見た目の易しさに惑わされないで、物語の世界に飛び込んでみませんか?ああ、英語ってこんなふうにできているのだ、ときっと納得されることでしょう。