英語力ゼロを気にしない  その3

知識は後からついてくる

知識学習に不安を覚えても、決して焦らない方がいいように思います。準備体操をしないでいきなりマラソンに臨んでもうまくいかないのと同じで、体をほぐし、体温を上げ、スタートに徐々に向かっていくのが好ましいでしょう。しかし、だからと言って易しい例文に取り組んばかりでは体温の上昇を期待できません。

私たちの教材は物語ですから、教科書のようにまずは「易しい」範囲でというものではありません。時制もいろいろ、be動詞も一般動詞ももちろん同時に登場しますし、命令形も不定詞も関係代名詞も出てきます。語順訳をするにあたってそれらの働きを理解する必要がありますが、ルールを見たり講師の説明を受けたりで訳せさえすればいいのです。すぐにその使い方まで了解できる必要はありません。なんとなくわかっていけばいいのです。知識を先へ推し進めるためには英作文に挑戦することになります。ただ英作文をする場合、仮に間違えても、講師からのヒントやアドバイスを通して繰り返し挑戦して完成させていきます。

でも英作文を行う前に、まずは音読でしょうか。スムーズな音読は準備体操として最適です。

とにかく、まず体験することです。様々な英語表現に触れてみる。音読をする。訳をする。その学習の中で文の要素、つまり主語、動詞、目的語等の働きを体得することが大事なのです。初めての街へ行った時、地図を片手に目的のお店を探すのに苦労しますよね。でも何回もその街を訪れるようになれば、街全体がどんなふうにできているかがわかるようになるでしょう。それと同じで、文法知識がないとなんとなく不安という気持ちが起きるかもしれませんが、「知識は後からついてくる」、なのです。同じ街を繰り返し訪れれば徐々に馴染むのと同じで、英語の文に必ず馴染みます。「不定詞?前にも出てきた気がするけれど忘れた」でもかまいません。いきなり何もかもわかろうとしなくても、繰り返し音読し、また訳をする機会に出会えば、なんとなくわかる感じが起こります。それでいいのです。そういう体験を十分に行ってから文法に臨めば、いきなりの学習よりずっとわかりが早いはずです。英語にあまり馴染んでいないのに、知識学習を始めるのは無駄、とは言いませんが効率が悪いのは確かです。

音読するのも、語順訳をするのも、結局は理解の源となる「溜まり」を作るためです。目には見えませんが、「溜まり」は絶対に必要です。日銀の政策と同様、低金利かもしれませんが、確実に増え続けます。「溜まり」があると、知識を学ぶ時にさざなみが起こります。「溜まり」にさざなみが起こるということは、理解するための準備ができていますよ、という証です。文法学習に追いついていないという不安が生じても、焦らない。そういう時こそ、黙々と物語作品を読みましょう。音読は不安を消してくれる処方箋です。