Nils Frahmが面白い。Toilet Brushes-moreがSpotifyから流れ始めた途端、引き込まれた。 ある種のインパクトが、そこにはある。
50年前、Keith Jarrettに出会った時も、同じようにある種のショックをを覚えた。
大阪・近鉄の上六から谷町9丁目に向かう地下街を歩いていた時、外へとつながる階段から強烈な響きが伝わってきて、誘われるようにその階段を登っていった。外へと出る途中、地下1階に当たる場所にジャズ喫茶があり、そこの扉が開いたままだったので、大きな音が外に漏れている状態だった。中へ入り注文もそこそこに、かかっている曲のレコードジャケットをしげしげと見たところ、Facing Youだった。それが彼との最初の出会いだった。その後、彼のソロの即興演奏にのめり込んだ。彼の独特な、コスモポリタン的な音色、メロディが見知らぬ世界へと引き連れて行ってくれる。それまではBud PowellやNina Simonといった1950年代のジャズしか聞いていなかった私にとっては、地続きのようでもありながら、また非常に新鮮な体験でもあった。
Nilsの電子ピアノ演奏での動きは、忙しい技術者といった風情。しかしそこから奏でられる音はやはりユニバーサルとでも言えるものを感じる。Keithの音楽はどれを聴いても、都会の風景であり、農村の夕べであり、どこかの海岸に打ち寄せる大きな波であり、強い風の中を舞う大きな鳥の姿でもある、といった自然と人間味に満ちたものだけれど、Nilsはそこからほんの少し、大地を離陸しているような趣がある。
抑制された抒情、その乾いた音は、デジタルな電子音の特徴でもあるけれど、リズムへの強烈なこだわりが、それを深めてもいる。彼にとってのリズムは、遠い世界からの呼び声、とでも形容するしかない。あるいは、みずからの抒情を少し離れて見つめているとか。
高原の花に手を触れ、手折らずにそこを去る・・またいつか、もっとうまく言える日が来るのを待つことにしよう。
Spotifyを聴いていると、あなたへのおすすめ、といった形で新しい演奏家や音楽を知る機会が生まれる。彼は、もうすでに絶大な人気を得ている演奏家。知らなかった!
YouTubeで見ることもできるので、以前のようにCDを買わなくても済むけれど、やはり1−2枚は手元に置いておきたいものである。